平成16年。予算1万円、が、できない。。     


今シーズン、忘年会に赤信号、のご報告です〜平成16年11月〜


ビックリするようなご予約のお客様、増えてます(^^;;

 日記のコーナーにも、チョッとグチっておりましたが、
 どうやら、街の中は私が愚痴る程度では済まない、かなり大変な様子であります。
 忘年会の予約、とあれば、主に新入社員様の仕事、でありますが、
 何とか低予算でご宴会を、とおっしゃる方のお声、
 ここへ来て、なにやら脅し口調が多くなってます。。
 「ナにィ! 何でこんなに高いんだ! 店長を出せ!」って、言われても、
 私が、その店長、って言うか、店主、なんですが・・(苦笑)

 皆様がなさる、忘年会の予算。
 今年、東京では、総予算1万円くらいの店が、極端に少ないですね。
 ひとりあたり、飲み代込みの総予算1万円で、10名、20名。 これはとんでもない、大金です。
 このくらい出そう!とおっしゃるかたは、当然、材料にも、お酒にも、
 きちんとした物を出してくれなければ、満足なさらない。
 店にしても、そのお気持ちこそが魅力的で、どの店もが、腕によりを掛けた、1万円の豪華版コースを用意して、
 お客様のご予約を、今か今か、と、待っているのが、例年のはず。
 なのに。
 いままで予算1万円で通してきた店の中で、
 その予算を変えずに、変わりなくキチンと料理を用意できる店が、本当に今年は、少ない。
 豪華版コースのはずなのに、それに限って、昨年より高額になってしまう。
 それより上、や、それより下、は、昨年と変わらないのに。
 なぜ、か。


「しかたない」が、多すぎる。。。

 予算1万円。
 これでごちそうを作るなら、魚・で食べる。酒・で食べる。野菜・で食べる。肉・で食べる。
 それも、旬の物、使って、店にも、かなり腕の振るい所、でありますね。
 では、その食材の中で、
 今になって、価格が高騰してきた物、順を追って列挙してまいります。

 まずは、台風で。
 度重なった風水害で、生鮮野菜の価格が、軒並み高騰している。
 とらふぐについては、多くの生産地で、養殖池の網が破れてしまって、
 予算1万円前後で使い頃の、大きな養殖とらふぐが、全く不足してしまった。
 かといって、
 大阪のふぐの生産地、福井県の物は、やはり関東には出してくれない。

 次に、意外かもしれませんが、焼酎ブームで。
 今関東で主流の焼酎は、芋。
 芋焼酎の蔵元は、もともとがとっても小さな場所で、生産量が少ない。
 チョッと有名になれば、すぐ「幻の・・」と、付いてしまう。
 産地は既に警戒して、東京へあまり、焼酎を出さないよう防衛しだしている。
 少なくなれば、当然、定価以上の値段で取引する以外にはないから、値段にはねかえる。

 そして、狂牛病騒ぎで。
 まだ沈静化していない米国の騒ぎのおかげで、
 輸入牛肉は、全般的に高値安定傾向。
 国産牛肉は、すでにはるか高値で安定し、出荷先も限定されてしまっている。
 新規でこれから参入しても、儲けが全く見込めない。

 追い討ちをかけたのが、新潟県の地震で。
 野菜の、更なる打撃に加えて、
 地酒の一番の売り物の産地が、地震で被害を受けてしまった。
 予算1万円で使える、極端な銘柄酒ではなくて、それに類似した銘柄のお酒が、
 今回の地震のあおりを受けてしまった。

 そして。
 東京は、「新しいもの」 「ブームのもの」 の、街でありまして、
 店も、新しくて、ブームに合った店が、儲かる。
 新規参入が儲けてあたりまえ、の、街でありますが、
 こうした、災害や、とりつけ過剰の際には、今まで培った信用がない店は、難しいですね。

 結局、すべての「仕方がない」の連続から、今まで通りの「予算1万円」は、実現できない。。。。

 では、逃げ道は、ないのか? と申せば、
 あるには、あります。
 ふぐを、輸入品に替える、 野菜を、輸入野菜や冷凍野菜で乗り切る、
 焼酎を、割安な銘柄にする、 地酒を、やめる。
 東京では、そのどれもが、いま、高騰してしまっているから。
 でも、もっともっと低価格の店では、抵抗なく出来る、これらのことも、
 予算1万円の店であれば、店の信用問題と、バーターさせられる事になる。
 けだし、どれもが、
 今、一番、消費者の皆さんが注目する、「ブーム」に乗った、店の「ウリ」にもなっている、モノだから。
 できるわけが、ない。。。。
 でも、なにやら納得、出来ませんね。
 だって、もっと高額の店であれば、昨年どおりの食事が、楽しめているわけですから。
 まるで、「予算1万円」のコースを狙い撃ちしたかのように、
 今年は、「仕方がない」が、多すぎる。。


東京価格の崩壊。。。

 ほとんど、知られていない話ですが、
 東京では、500ページにも及ぶ、できあいの安価な食材カタログが出回っております。
 ブロッコリーなら、3センチカット、5センチカット、7センチカット、といったように。
 すべてが既に、下茹でと味付けが終わって、パック詰されてあって、
 いくつか集めて盛り付ければ、温野菜はすぐに出来上がる。
 だから、東京発の料理は、安い。
 東京で、1万円の豪華コースは、実はこれらの食材の上に、成り立っている、
 1から作ったら、もっと高額になる料理のコースであることが多いんですね。
 とっても便利なお話ですが、問題は、
 すべてがコールドチェーンで賄われる、流通システムの恩恵をこうむっている事で、
 その流通システムが少しでも破綻すれば、すぐに価格は跳ね上がる、という事であります。
 相次ぐ災害と、元々少ない商品の、無理なブームで、
 結果、東京流の商売が、今年は、機能しなくなった、というのが、
 今回の1万円コースに限って値上げ、の、一番の原因じゃないか、と思います。


カオスの、中から

 私は、周りから「ヘンジン」と、ありがたくない名前を喜んで頂戴して、
 意地を張って、産地の方と連携して、良いモノを仕入れて、1から作って。
 その我慢ができずに、
 ほんの少し前、とうとう「予算1万円」を超えてしまいましたが、
 この金額を超える時には、それこそ、大事な宝をドブに捨てるような気持ちでした。

 今、
 周りで、この年末に、この金額をあきらめざるを得ない店が多発中、という事は、
 経営者の皆さんが、どれほど、心中苦しみ抜かれている事か、
 察する事は、容易すぎるほど、であります。
 東京は、今、再び混ぜ返された、苦しいカオスの中にあるのかも、知れません。
 しかし。
 冬来たりなば、春遠からじ。
 苦しい時があればこそ、暖かい春の日差しが嬉しい。
 苦しい時にこそ、明るい希望の話を、してみたいものです。

 宴会の予約に奔走される、主に新入社員の皆様、
 上司様のご指示や、思い入れに見合うお店様が見つからず、
 大変苦しいお気持ちは、こちらへも痛いほど、伝わってくるのでありますが、
 河岸の火事ではすまない、今年の産地の皆さんの苦しさは、いかばかりの物か、
 心に留めて頂きたい、と、切に願うのであります。








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